土曜の朝に実家を訪れ
意思の疎通ができない
9年間寝たきりの父の身体を触った。

お迎えは未だのようだ…

人間は、お迎えが近くなると
身体の一部にその知らせを出してくる。

この時点では、
その知らせが
未だ出ていなかった。

次の日の日曜の朝に
朝食を食べさせている母相手に
大きな声をあげて
泣いているような?感じで、
何かを叫んでいた。

この時も、
大きな声が出ているし
呼吸が浅くなる気配は無かった。

更に2日後の火曜日の昼頃、
突然、兄弟から電話がかかってきて、
親父が◯◯中央病院に
運ばれたという。

土曜と日曜の状態を考えれば、
どうせ、しばらくしたら、
家に戻ってくるのだろうと予想していた。

この日の午後は、
クライアントを観る予定になっていたので、
どうせ戻ってくるのだから、
親父のことは兄弟に任せておけば大丈夫だろうと、
深くは考えていなかった…

15時30分から
クライアントの身体を観始めて
しばらくすると、
突然、身体が小刻みに
カタカタと震え始めた…

「(ん?何だ?これ?)」

今までにも全身が震える事などほとんどない私が、
この珍しい現象に1番驚いていた。

熱はないし、
脳に異常も感じない。
力が入らない状態では無さそうだし、
他に身体の異常は感じない。

時計を見たら
16時を少し回ったところだった。
時間にして10分間くらい
この状態が続いたのだ。

クライアントの気が切れてしまうため、
身体を観ている手を
止める訳にもいかず、
小刻みに震えている事を
悟られないように操法を続けていると、
震えがおさまった。

それから少しすると、
マナーモードになっている
携帯のうなり声が聞こえてきた。

それが切れて
2、3分すると再び
携帯がうなっている。

そんな事を4、5回繰り返して
携帯は鳴らなくなった。

「(まさか⁉︎)」

18:30頃、
ひと段落し手が空いたので
携帯を確認すると兄弟からの着信が
数回残されていた。

メールの受信もある。

留守電は、再生して
内容を聞くまでの無駄なアナウスに
かなり時間を取られるため

メールを先にチェックする。
「今、実家に兄弟が集まっている」
とだけ書かれていた。

そんな事は、どうでもいい!
肝心な親父の容態が記されていない。

直ぐに折り返しTELをかける。

親父が逝ったという。

その足で実家に向かった。

いつもベットに寝ていた親父の部屋に
TVドラマなどで見る状態で
白い布が掛けられ、
畳の上に寝かされている
親父であろう遺体が横たわっていた。

横には、喪服を着た知らない男が
母親と喋っている。

恐らく葬儀屋だろう。

挨拶もせず、
遺体に近づき
白い布を飛っぺ剥がし
親父であることを確認すると、
直ぐに身体を触った。

こんな時でも身体を触る。
明らかに職業病ですね…

未だ、温かい。

つづく…