昔に比べて
少々丸くなったような
優しくなったような
頑固親父は、

「よくスポークが折れているのに
気が付きましたね?」

私「たまにチェックするんです」

頑固親父
「前輪は、ハンドルがブレるから気が付くけど、
後輪はなかなか気が付かないね」

私「そうですか…」

そんな会話をしながら
住居兼店舗になっている奥から
人の気配を感じないことがヤケに気になった。

私「(人の気配が無い。先立たれたのか?)」

離婚という感じは受けなかった。

店内奥から感じる空気は、
先立たれた雰囲気だった。

頑固親父
「(車輪が)ブレていると気持ち悪いですよねー」

そういうと、
左手親指先を
車輪の横スレスレに当てがい、
右手でペダルと回しながら

左手親指先の車輪が
触れるか?触れないか?くらいの
コンマミリ単位で
歪みを調整しだす。

私「(職人気質だ!こりゃーボケない)」

手でペダルを回しながら
カラカラと後輪を回して、
調整をしている。

頑固親父
「ん?変だなぁ?この1本が調整が効かない」

私「(さすが)」

頑固親父
「調整が効かないこの1本も
交換した方がいいかもしれませんね」


「もしかしたら、以前に交換した時に、
同じサイズのスポークが無かったので
長いのを加工して、ネジ山を作って付けたスポークが、
多分、それだと思います」

頑固親父
「もしかしたら、長さが合っていないのかもしれませんね。
これも交換した方が良いかもしれませんね」

私「お願いします。それも交換して下さい」

「(さすが、眼力は落ちていない。こりゃ(ボケ)心配ないわ)」

 

 

 

 

つづく