以前は、調整できた車輪の歪みを
最も簡単に「できない!」と
放り出られ、新しい自転車を勧めてくる
Hオートの社長の態度に、

「(量販店とかわんねーじゃん!)」

と、疑問を抱きながら、

「(はじまったか?)」とも思った。

何が?はじまったか?って?
アレですよ!アレ!

 

しかも、
2本折れていたのを
確認していたのに、

「1本しか折れていない!」って
何だか狐に摘まれているような
不可解な気分満載になった。

「(やっぱりはじまったな!)」
と、感じた。

不愉快な気分を払拭するため
このままでは帰れない!と思いたち、
個人経営の他の自転車屋を思い返した。

「(あそこの自転車屋は…
態度が横柄だから
シバき倒したくなるから、やめて…
あっ!あそこにあった。)」

以前、住んでいたところの
裏に頑固親父がやっている
自転車屋があるのを思い出した。

Hオートを出た足で
次の自転車屋に
そのまま向かった。

店は、やっていた。

雰囲気は、昔に比べて
さびれた感が漂っている。

先約はいないようだ。

私「すみませーん…」

どびらを開けて声をかける。

奥から出てきた顔を見て
「(そうそう、この親父だ)」と
数十年前の記憶が蘇る。

しかし、以前より
印象が少し丸くなったような、
弱々しくなったような、
老いた感じを受けた。

数十年も経っているから
それも仕方ないのか?
と思いながらも、

再度、状況を説明する。


「車輪の歪みがなおせない!って
言われたんだけど…」

少々、弱々しくなった身体でも
眼孔は鋭く、目を見開いて

頑固親父「そんな事ないだろう!」

と、工具が並ぶ自分の主戦場である店内に
自転車を引き入れた。

頑固親父「みてみましょう」

1本1本スポークを確認する。

頑固親父「まだ、1本折れているのがあるね」

私「(そうでしょう)」

続けて

頑固親父
「横からの光に反射するように付けられた
反射板が付いていたから見落としたのかもしれないね」

と、同業者を庇うような
優しい言い草を放ってきた。

それを聞いて、
昔に比べて、随分、
丸くなった印象を受けた。

 

 

 

つづく…