つづき…

『日本では米国や欧州の惨状と比べて、
「われわれは感染者数も死者数もはるかに少ない。
新型コロナ対策に成功している」
と楽観視する向きが強いように思います。

しかし新型コロナの威力を
目の当たりにしている医師からすると、
その楽観姿勢には極めて強い不安を感じます。

今でも日本では電車通勤が
普通に行われていて、
学校の授業も再開されようとしているそうです。

この状況ではクラスターどころではなく、
不特定多数が日常的に感染リスクにさらされます。
前述したように、
病院では初期の症状の患者に
きちんと投薬などの治療をし、
サチュレーションなどの
きめ細かい管理をする必要があります。
それを徹底し、重症化する人を少しでも減らす。

そして本当に必要な人に、
間違いなく人工呼吸器を使ってもらう。
そこから回復できる可能性がわずかであっても、
その可能性を設備のキャパシティで
あきらめさせるなんてしたくない。
そのためには、感染の勢いをなんとか
抑制することが大前提として欠かせないのです。

うちの病院では、
人工呼吸器やICUのキャパシティが
そろそろ限界に近づきつつあります。
人工呼吸器はたくさんあったのに、
現時点ではあと20基ぐらいしかない。

これが尽きたら、
後は命の取捨選択をせざるを得ない。
倫理委員会で議論して
「どの様な患者からは人工呼吸器を外させていただく」
と決めなければいけない。
そういう時期が、
間もなく来る可能性を覚悟しています。
うちの病院だけでなく、
州全体でも全受け入れ能力の
8割程度に達していると思います。

隣のニューヨーク州では、
すでに命を選ぶ状態になっています。
ニューヨークの新型コロナ患者を
受け入れ可能な病床数は、
合計5万3000床、うちICU 3000床
(州の人口は約2000万人)あります。
それがほぼ埋まって、人工呼吸器も
枯渇しそうになっています。

一方で東京都は700床
(都の人口は約1400万人)程度しかない。
これでは全く足りません。
重症患者が少ない今のうちに、
受け入れ能力を引き上げておくのがいいと思います。』

 

 

つづく…