台風10号が襲来する中、
その影響で天気がコロコロ急変している。

世間はお盆休みだが、
ボランティアで猫にご飯をあげに行くため、
午前中に、自転車で、とある倉庫周辺に住みついている
黒猫兄弟のところへ向かった。
向かうときの天気は、陽が出ていて雨が降る気配は無い。

いつもは、倉庫で働く人が黒猫達の面倒を見ているが、
この時期は、やはり倉庫もお盆休みのようで、
現場に到着すると、倉庫前に駐車してある車の下で
2匹の黒猫が涼みながらご飯を待っていた。

夏で暑いですから、
猫も喉が渇きます。
これ、当然です。

ご飯をあげるだけでなく
必ず水も用意します。

自分達人間も水分が必要ですから
他の生き物も同じなのです。

水を入れる用に
丼が置いてあるので、
その丼をキレイにしてから
水をなみなみ入れます。

任務を果たし、帰路についた途端、
来るときは晴れていた空が、雲行きが激変し、
大粒の雨がボタボタ落ちてきたのだ。

直ぐ、近くのセブンイレブンに駆け込み
強風で傘がひっくり返っても復元する
ビニール傘を購入。自転車をこぎはじめた。

途中、雨足が更に強くなったり、弱くなったり、
台風が近づいている事を思わせる
不安定な空模様。

家の近くに来ると雨足が強くなって、
バケツをひっくり返したような雨が
地面を叩きつけていた。

そんな中、広い歩道を自転車で
ゆっくり走っていると、
歩道隅であぐらをかいたような状態で、
ヘタレ込んで、
傘をさしている老人が目についた。

帽子をかぶった、メガネをかけた老人だ。
身なりは、きちんとしている感じ。
よく見ると、白髪の大村崑みたいな爺さんだ!

バケツをひっくり返したような雨だから
ヘタレ込んで傘をさしていても、
当然のことながらズボンはびしょ濡れ。

横には、その老人の荷物と思われる
緑色のビニール袋と
黒のウエストポーチが転がっている。

どう見ても普通ではない。
直ぐに、声を掛ける。

私「大丈夫ですか?」

老人「大丈夫!」


「ん?(俺の容姿にビビってんのか?)」
「(どう見ても大丈夫じゃねーだろー!)」
「(豪雨の中ヘタレ込んで、傘をさして…)」
「(ズボンは、ずぶ濡れだし、両鼻から思いっきり水っぱな垂らしてるし…)」
「(見事な水っぱなだから?認知症か?)」

他の通行人の邪魔にならないように、
歩道の片隅に自転車を止めて、


「立てますか?」
「何処か?痛いところは無いですか?」

老人「足が悪くて…(しばらくの沈黙のあと)手を貸してくれるかい?」

私「いいですよ…」

老人が差し出した右手を見て躊躇した。
叩きつけられた雨で跳ね上がった泥が
山ほど付着して、手が泥だらけになっていた。

つづく…