自分の身体の変動に
全く気が付いていない人は結構多いが、
オーケストラが演奏しているかのような
自分のお腹の大きな変動を感じ取れない。

あまりの感受性に鈍さに
返す言葉に困ったのを覚えている。

もしかしたら、
お腹の内部が動く激しい現象は、
自分だけが感じていたのか?
とも思ったが、

いやいや、そんな事はない!

手応えは尋常ではなかった。

クライアントの身体の鈍さに呆れながら、
この感受性の鈍さなら
悪性新生物に侵食されるのも頷けた。

どのくらいの時間が経過したのか?
私の中では、時間的感覚が無かった。

今思えば、時空を超えるほどの集中力で
診ていたのかもしれないし、

オーケストラの反応に
酔いしれていたのかもしれない。

その一点から
手を動かすことができなかった。

いつまで続くのだろう?

お腹の中にいる
大オーケストラは
しばらく、ゴボゴボと
大きな音を奏で続けた。

そのうち、
上の方からも音がしてきた。

旦那さんのイビキだ。

社長だけある。

大物ですね。

この鈍さなら
最後の時が訪れても、
何の問題もなく、
この世から離れられるであろう事が
脳裏をかすめた。

お腹の反応が落ち着いてきたので、
この時に操法を終わらせた。

貴重な体験に感謝しながらも
この後、この身体がどうなるのか?
とても気になった。

このまま続けていれば
奇跡が起きるのかもしれない
とも思ったが、

その後、旦那さんは
病院の入退院を繰り返し
私の前に現れることはなかった。

あの鈍さなら
最後も鈍いまま
この世を離れたであろう。

 

 

 

つづく…