お狐さんは、
失せ物探しが得意なのだ。

どんなに優れた霊能力者でも
お狐さんが憑いていない人には、
失せ物探しは絶対にできない。

お狐さんが憑いていないのに
迷い人や行方不明者について助言する人は
正真正銘の偽者である。

 

1週間を過ぎても
失せ物が出てくる気配すら無く、

いつも持ち歩く仕事用のバックの中も
いつも持ち歩く出掛け用のバックの中も
捜索した、

もしかしてと考え、
たまに持ち歩くバックの中も
探してみたが、
見当たらない。

こうなってくると部屋を
片っ端から捜索しなければ
気が済まなくなってくる。

捜索開始!

そんな捜索の中、
ついでに断捨離も
おっぱじまり、
不要だと思われるモノを
ドンドン袋に詰めた。

それにしても、
見当たらない。

今までの経験上
自分には、失せ物探しが得意な
ハナコ(自分が勝手に名前を付けて呼んでいるだけ)が
憑いていると思っていたが
気のせいだったのか?と
考えはじめた。

この日も用事があり
捜索をそうそうに切り上げ、
身支度をして、いつもの出掛け用のバックを持ち
出掛ける準備に入った。

気持ちはやさぐれていて
「俺の狐も大したことね〜なっ!」
と捨て台詞を心で吐き

いつも出掛ける時に持ち歩く
何層にもポケットが別れている
バックの中に手を入れると
何やら手に当たる。

直接では無いが、
違うポケットに
鍵らしい手応えが伝わってくる。

「(まさか!)」

このバックは、
ポケットが大きく三層に別れていて
それぞれのポケットの中に
更に、小さなポケットがいくつか付いている
複雑な構造になっている。

このバックは、散々探したし、
鍵を失くした後も出かける際は
何度も使用していた。

手に当たる感触は
失くした鍵そのものだった。

他にポケットを探してみると

「鍵確保!」

間違いなく失くした鍵であった。

本当に狐に摘まれたような感じであった。

この後、無礼を言ったお狐さんに
深々と頭を下げた事は言うまでもない。

 

 

おわり