塩谷「ひとつは情報化社会っていうのがあって、昔みたいにちょくちょく電話で連絡をするっていうんじゃなくて、周りの人とのコミュニケーションがメールとかそういうのになったりして、そうすると高齢の女性というのは何となく情報化社会から孤立化してしまって、息子がいたり娘がいたり家族はいるんだけれども、何となく孤立しているような感覚になる人が、多分、多いんだと思うんですね。貴女が自身がどうか?っていうのは分かりませんよ」

女性「はい」

塩谷「でも、そういう周りの人とのコミュニケーションが途絶えてしまって、人との触れ合いがね、少なくなってくるっていうのが、特に女性にとってはストレスになるのかなぁ?と思っているんですよ」

女性「あぁー」

塩谷「でね、今回、万引きをしてしまったっていうのは、貴女にとっては、自分自身でもショックな事で、落ち込んでいる、そしてお嬢さんとの関係でも、顔向けできなような状態になっているのかもしれないけれども、ちなみにお嬢さんは?どういう事言ってるの?」

女性「何で、そんなことしたの?って、そういう言葉でしたね」

塩谷「お嬢さん、怒ってる?」

女性「怒っていると思いますよ」

塩谷「思いますよ!っていうのは、貴女に対して、直接ぶつけてこないのかな?」

女性「もう呆れているっていうか、見放しているっていうか、そういう風だと思います」

塩谷「んー、やっぱりね、ひとつは貴女自身の心に中に孤独があって、その孤独が、多分、何らかの形で、今回の貴女がやってしまった事に結びついている可能性があるので、お嬢さんに顔向けできないという貴女の気持ちも分かるし、貴女自身の母親としてプライドもあるかもしれませんけれども、これを機会にお嬢さんときちんと本音で話し合える関係を作っておいた方が良いのではないでしょうか?」

女性「私もそうしたいです」

塩谷「万引きをして捕まってね、それによって余計に社会から隔絶してしまうとか、先ず万引きをしたお店には行けなくな
りますよね、で、それを誰かに知られるとその人とも会いたくなくなりますよね」

女性「はい」

塩谷「そうやって、周りの人との間で壁を作っていくと、どんどん孤独が増してきて、元々その孤独感が原因になっていたのに、ますます悪い方に行ってしまって、また繰り返すなんて事になってしまうと大変ですから、お嬢さんは状況がわかっている訳ですから、きちんと認めて、『貴方にも迷惑かけたし、お店にも迷惑かけたし、またこんな事すると色々な人に迷惑をかけるから、こういう事しないようにするから、でも何かこう、自分が危なそうになったら注意してね』っていう風に、お嬢さんに話するなりして、コミュニケーションをしっかりとって貴女自身の孤独感を少しでも減らしていくように、お嬢さんにも甘えるところは甘えて…

女性「いやぁー私も性格がキツい方なので、娘もよく似てて、やっていけるか?今は、その様にするつもりですけれども、中々、こちらも甘える事もできないし、娘もタイプではないので、やっていけるか?と思います」

塩谷「甘えるというのは、経済的にオンブするっていう事ではなくて、心を開いて悩みを打ち明けるということです」

女性「はい」

塩谷「貴女自身が失敗した事によって、色々な思いがあるでしょう?そういう思いをお嬢さんに共有してもらうっていうのが、甘えてもいいんじゃない!って事ですよ」

女性「あっ、分かりました」

塩谷「社会との接点としてのお嬢さんとの関係を保ち続けて『お母さんのこと見守ってね』っていうような、そういう意味での甘えられる関係を作っておいた方がいいのかな?と思います」

女性「はい。ありがとうございます」

塩谷「加藤先生に変わりますね」

 

 

 

つづく…