つづき…

この日の精神統一も
いつに無く充実した時間を
過ごすことができた。

そして、この日の夜、
25年来の付き合いがある
クライアントが来る予定になっていた。

私がこの世界に入ったばかりの
見習いの時代に、
彼の父を診ていたのだ。

彼の父の最後を、
新橋にある大きな病院で
看取る形になったのだが、
他人の最後に立ち会ったのは
この時が初めてであった。

あの時の記憶は、
四半世紀経った今でも
鮮明に覚えている。

命のやり取りの現場で、
他では体験できない事を
たくさん経験させてもらい、
それが今の自分の礎になっている。

夜、その彼が予定通りにやってきた。

彼「ご無沙汰していまーす!」

主訴を伺うため
私「今日は、どうされました?」


「特に、自覚症状はこれといって無いのですが、
彼岸で親父の墓参りに行ったら
先生の事が思い浮かんだので…」


「(ん?)それはそれは…」
「あちらを向いて正座してみましょう!」

何気無い彼の言葉に
何かを感じながらも、
最近の彼の特異体質の話に耳を傾けて、
いつも通り身体を観はじめた。

佳境に入りお腹を触りだすと
空気が一変する。

お腹の要所要所を捉えていくが、
私の身体を使って誰かが彼の身体を
診始めたのだ。

(そんなバナナ?!バカな?)

そんな気がするだけです…
(と、言うことにしておきます)

実際には着ていないが、
振袖を着ているような感じで
朝の精神統一時に感じた心地イイ空気感が
どんどん袖が伸びていくようなイメージで
彼を包んでいくのがわかる。

お腹を捉えられて
違和感を感じるのか?
彼の呼吸が自然と止まる。

(息の根を止めている訳ではありませんから…汗)

明らかに急所を捉えられている証拠である。

つづく…