「ガチャ!ガチャ!」

朝方、物音で目が覚めた。

だが、
電気もつけっ放しで、
TVも付いていたので…

「TVの音か?ん?じゃないよなぁ?」

「何の音だ?」

時計を見ると
3時15分を指していた。

ウチの箱入りネコは?というと、
横で寝息を立てている…

「この物音…(でも、ネコは警戒心ゼロで寝ている。
私が横にいるから安心しているのか?野性感ゼロだな…
箱入りだから仕方がないか…)」

「んー?」

確かに、玄関の方から物音が聞こえてくる。

「侵入者か?…いい度胸してんじゃん…」

「ここが誰の住処か?知ってるのかな?」

私がやっている空手は、
空手で強くなれない人用に居合も行なっている。
もちろん家には、居合と棒に加え、
座頭市が使うような仕込み杖も常設してある。
もちろん、所持するための手続きは合法に行なっている。

「この物音…間違いない…玄関の方だ!」

屋内で戦う際は、
居合や棒は長くて使いづらい。

実は、そんな事も考えて、
屋内での物騒な戦いに備えて
別の物を用意してあるのだ。

それは、背中をカキカキすると
とても気持ちがイイ、孫の手だ。

数本用意してある。

実は、この孫の手、侮れない。

子供の頃、親から怒られるときに、
よくこれで叩かれていた。

弟は、これでよく頭から血を流していたのだ…
痛いなんて生易しいものではない。

乾燥させた固い竹で出来ているから、軽いし、
使いようによっては、かなり心強い道具になる。

侵入者が凶器くらい持っていても、
屋内なら回転率を上げて孫の手だけで
十分返り討ちにできる。

「(左右に1本づつ持って二刀流でいこうかな?)」
なんて事を考えながら、とりあえず、

そんな心強い孫の手を片手に、
音のする玄関に近ずいて行くと…

「間違いない…鍵穴に何かを差し込んでいる音がする」
「ピッキングか?」

静かにドアノブを押して開けようとする
音もする。

「ん?来るか?容赦しねーぞ!」

しかし、玄関のドアが開かないようだ。

「(そうだよなぁ!少し前に、ドアを新しくしたばかりだし、
ピッキングじゃ開かない鍵だと思ったけど…ドイツ製だったかなぁ?)」

しかし、油断は禁物。

いつ玄関が開いてもいいように、
屋内最高のアイテムである孫の手をしっかり握り
玄関に一歩づつ近づいていく。

誰かが、玄関を開けようとしている事には
間違いない。

しかし、やっぱり玄関のドアが
開けられないようだ。

「(何か?変だな?)」

少し考えて…

インターフォンのカメラ越しに
侵入者を確認するか?

ドアに付いている小さなのぞき窓から
侵入者を確認するか?

どちらにするか?を考えていた。

インターフォンだと、
外のカメラのライトが
点灯してしまうかもしれないから…

そうすると、
こちらの動きが相手にわかってしまう。

のぞき窓から確認しよう。

小さなのぞき窓から、
内側の灯りが外に漏れないように
細心の注意を払い、
音を立てないようにドアに近づいていく。

「(まさか飛び道具なんて持ってないよなぁ?)」
「(のぞき窓を撃たれると面倒だからなぁ…)」

静かに、
気配を消して、
そーーっと、
覗き込むと…

「ん?……女の人?」

「なんだ…?」

「もしかして、部屋間違えてるのか?」

もう一度、のぞき窓から見ると、
フラフラしながら、
鍵を穴に挿し込んでいるみたいだけど、
鍵が開かないのに、ドアノブだけ押してるのか?

何回も同じ事をやっている…

酔っ払っているのか?

酔っ払いが部屋を間違えてるだけか…

気が抜けて、
トイレに行って用を済ませ、
戻ってきても、
まだ、ガチャガチャやってる…

10分くらいガチャガチャやって
諦めて消えていった…

部屋間違えるほど飲むなよー
って感じですね…

何が来てもイイけど…
睡眠の邪魔はしてほしくないものですね…

そういう訳で、皆様も
飲み過ぎ注意です!